シャドーイングは、聞こえた英語を少し遅れてそのまま口に出す練習です。スクリプトを見ないで、音の影のように追いかけます。あなたは止まらずに聞き、止まらずに話します。
この練習が鍛えるのは、語彙や文法ではありません。鍛えるのは、音を聞き取る速度と、口の動きです。英語の音のつながりや弱い音に、耳と口が慣れていきます。その結果、TOEICのリスニングやオンライン英会話での聞き取りが楽になります。
ただし、やり方を間違えると効果が出ません。難しすぎる素材を使ったり、意味が分からないまま音だけ追ったりすると、耳も口も変わりません。このページでは、素材の選び方から手順、時間の目安、直し方までを順番に説明します。今日から一本の素材で始められます。
シャドーイングは聞く速さと口を鍛える
シャドーイングは、知っている単語を聞き取れる速さにする練習です。文字で読めば分かる文でも、自然な速さでは聞き取れないことがあります。それは語彙が足りないのではなく、処理の速さが足りないのです。あなたは音を聞いてすぐに口を動かすことで、その速さを鍛えます。
文法や単語の学習とは役割が違います。新しい単語を覚えたいときは、単語帳や精読が向いています。関係代名詞 (relative clause) や仮定法 (subjunctive) の理解を深めたいときも、文法の学習が必要です。シャドーイングはその土台の上に、聞く速さと話す滑らかさを積みます。
具体的には三つが変わります。第一に、音のつながりが聞き取れるようになります。第二に、弱く読まれる語に気づけるようになります。第三に、口が英語のリズムに慣れて、会議室での発言や外国人のお客様の対応でも言葉が出やすくなります。意味が取れる素材で続けることが条件です。
- 速さ: 知っている文を、止めずに聞き取れるようにします。「I want to see you tomorrow」(明日あなたに会いたい) が一息で入ってきます。
- 口の動き: 英語のリズムで口が動くようになります。満員電車の中で小さな声で練習しても、口の筋肉は育ちます。
- 限界: 新しい語彙や文法は増えません。九割分かる素材を使うのはそのためです。分からない文は先に意味を確認します。
九割聞き取れる一分台の素材を選ぶ
素材は、スクリプトを見れば九割分かるものにします。TOEICのPart 3やPart 4、英検二級から準一級のスクリプト、オンライン英会話の教材が目安です。長さは一分から二分がちょうどよいです。長すぎると、録音の確認が雑になります。
速さは、少し速いと感じる程度で止めます。最初からネイティブ同士の雑談や映画は選びません。ニュースも、背景知識がない話題は避けたほうがよいです。あなたが出張や英語の会議で実際に聞きそうな内容が理想です。新宿での道案内や、コンビニでの接客のような身近な会話も続けやすいです。
音声は必ずスクリプト付きにします。スクリプトがないと、聞き取れない部分を確かめられません。音質がはっきりしたものを選びます。田中さんが留学の面接対策をするなら、面接の想定問答の音声がよいです。佐藤さんがTOEIC対策をするなら、公式問題集の音声が安心です。
| 種類 | 選び方 | 例 |
|---|---|---|
| 長さ | 一分から二分 | 短い会話一つ、TOEICの設問二つ分 |
| 難しさ | 見れば九割分かる | 知らない単語が五個以下、文構造は追える |
| 音声 | はっきりした発音 | 公式教材、教材会社の音声、ゆっくりめのニュース |
五段階で進める基本の手順
いきなり音を追いかけないでください。手順を五つに分けます。一回十分から十五分で終わる流れです。あなたは同じ素材を、意味から音へと少しずつ近づけます。
最初は内容理解です。スクリプトを読んで意味を取ります。知らない単語は調べます。冠詞 (article) の a や the、前置詞 (preposition) の for や at もここで確認します。意味が分からないまま進むと、ただの口真似になります。
次に、スクリプトを見ながら音読します。その次に、スクリプトを見ながら音声に重ねます。これをオーバーラッピングと呼びます。慣れたらスクリプトを外してシャドーイングをします。最後に録音して聞き返します。録音が上達の鍵です。
- 内容を確認します。 スクリプトを読んで意味を取ります。日本語訳を作る必要はありません。あらすじが言えれば十分です。
- 見ながら音読します。 音声なしで、自分の速さで読みます。発音が不安な語は音声で確かめます。ここで口を慣らします。
- 見ながら重ねます。 スクリプトを見ながら音声のすぐ後を追います。遅れても止まりません。分からなくなったら次の文に移ります。
- 見ないで追います。 スクリプトを外して同じことをします。一文遅れてもかまいません。音のつながりを真似します。
- 録音して聞き返します。 一分だけ録音します。元の音声と比べて、落ちた語やずれたリズムに印を付けます。
一回十分と一素材五日が続く目安
一回は十分で十分です。通勤前の十分や、昼休みの十分を使います。疲れている日は五分に短くします。あなたは毎日同じ時間に練習すると続けやすいです。満員電車の中では、心の中で追うだけでもかまいませんが、できれば小さな声を出します。
同じ素材は四日から五日使います。一日目は意味の確認と音読が中心です。二日目と三日目に重ね読みとシャドーイングを増やします。四日目に録音の仕上がりを比べます。スラスラ追えるようになったら次の素材に移ります。毎日素材を変えると、何も定着しません。
週の目安は、一週間で一本から二本です。TOEIC前の追い込みでも三本までにします。ゆいさんが英検対策をするなら、面接のスクリプト一本を一週間使う形がよいです。けんたさんが海外出張前なら、会議の冒頭の挨拶の音声を五日続けるだけでも違います。少ない素材を深く使うほうが伸びます。
つながる音と弱い音を見える化する
聞き取れない原因の多くは、単語のつながりと弱い音です。文字で見ると分かる文が、音になると別物に聞こえます。シャドーイングではそこを真似します。次の三つは同じ文の読み方の違いです。
同じ文を三通りに読んで比べます。違いがそのまま聞き取りの壁です。
I want to meet her for lunch.
一語ずつ区切っています。意味は取りやすいですが、実際の会話の速さとは違います。この読み方だけでは聞き取りは伸びません。
I wanna meet'er fer lunch.
語がつながっています。「want to」は「wanna」のように、「meet her」は「meet'er」のように聞こえます。ここを真似すると速い文が追えます。
I wanna meet her for lunch.
内容語の「meet」と「lunch」ははっきり残り、機能語の「wanna」や「for」は弱く短くなります。強い語に注意を置くと全体が聞き取れます。
区切りつながる音弱く短く
効果が出ない三つの詰まりを直す
効果が出ないときは、原因はほぼ三つです。素材が難しすぎるか、意味を飛ばしているか、録音を確認していないかです。あなたはどれに当てはまるか確かめます。当てはまるものを一つ直すだけで変わります。
素材が難しいと、追うだけで精一杯になります。意味が分からないと、音の予測が働きません。録音を聞かないと、自分の抜けに気づけません。TOEICのスコアが伸び悩むときも、まずこの三つを見直します。練習量の問題ではないことが多いです。
直し方は小さくします。難しい素材はレベルを一つ下げます。意味の確認はスクリプトに戻ります。録音は一分だけ比べます。大きく変えようとしないほうが続きます。
✦ 理解度チェック
伸び悩みの直し方
五問で確認します
スクリプトを見ても半分しか分からない素材を使っています。どうしますか。
音だけ追っていて内容を覚えていません。何を足しますか。
一週間毎日違う素材を使っています。どう直しますか。
録音を一度も聞き返していません。まず何をしますか。
口だけ動かして声が出ていません。どうしますか。
間違えた項目は、Slova が十分の短いレッスンにまとめます。あなた自身の一週間を題材にした英文で練習できます。
Slova で練習する →音読とオーバーラッピングを使い分ける
音読、オーバーラッピング、シャドーイングは別の練習です。目的が違います。あなたは段階に合わせて使い分けます。どれか一つだけでは伸びにくいです。
音読は、自分の速さで読む練習です。発音や区切りを確かめられます。オーバーラッピングは、スクリプトを見ながら音声に重ねる練習です。速さとリズムを体に入れられます。シャドーイングは、スクリプトなしで追う練習です。聞き取りの速さを鍛えます。
目安として、意味の確認の後は音読から入ります。速さについていけない間はオーバーラッピングに戻ります。九割追えるようになったらシャドーイングに進みます。行ったり来たりしてかまいません。戻ることは後退ではありません。
| 練習 | 使い方 | 向いているとき |
|---|---|---|
| 音読 | スクリプトを見て自分の速さで読む | 意味の確認直後、発音の整理をしたいとき |
| オーバーラッピング | スクリプトを見て音声に重ねる | 速さやリズムに慣れたいとき |
| シャドーイング | スクリプトなしで音声を追う | 聞き取りの速さを鍛えたいとき |
話す練習と組み合わせて定着させる
シャドーイングだけでは話せるようになりません。聞く速さと口の慣れは育ちますが、自分の考えを組み立てる力は別だからです。あなたは短い産出練習と組み合わせます。組み合わせると定着が速くなります。
やり方は簡単です。シャドーイングした文を一度止めて、その文を借りて一文作ります。「I have already eaten」(私はもう食べました) を追ったら、「I have already finished my report」(報告書はもう終えました) と変えて言います。現在完了形 (present perfect) と過去形 (past tense) の言い分けもここで整います。たった一文でかまいません。
オンライン英会話がある日は、追った文を一つだけ使います。会議室での発言の冒頭や、お客様への挨拶に混ぜます。使えた文は定着します。使わない文は忘れます。聞く練習と使う場面をつなげることが大切です。[2]
- 借りて一文: 追った文の型を借りて自分のことを言います。「She is working now」(彼女は今働いている) から「I am working on the Kyoto project」(京都の案件を進めています) を作ります。
- 短く区切る: 長い文は二つに分けます。関係代名詞 (relative pronoun) の文も、前と後ろに分けて言い直します。
- 毎日一つ: 産出は一つで十分です。助動詞 (modal verb) の can と may の使い分けなど、気づいた点を一つだけ直します。
定着しない五つの使い方を直す
最後に、よくある五つの使い方を確認します。どれも日本語話者に起きやすいつまずきと関係します。あなたも心当たりがあれば、今日から直せます。
日本語には冠詞 (article) がありません。そのため a や the が抜けやすいです。複数形の感覚も薄いので、books の s が落ちやすいです。シャドーイングで弱い音を落とすと、まさにそこが消えます。録音で確かめる理由はここにあります。
- 意味の分からない素材を使うのをやめます。 スクリプトを見て九割分かるものに戻します。知らない単語が多い素材は後回しにします。意味が分かると予測が働きます。
- 速すぎる素材から始めないようにします。 最初はゆっくりめの教材にします。TOEICの基本的な会話や英検のスクリプトが無理なく続けられます。速い素材は四日目以降のご褒美にします。
- 録音を必ず聞き返します。 一分でよいので録音します。a や the、前置詞 (preposition) の in や on が落ちていないか聞きます。落ちた語だけ次の回で意識します。
- 口だけ動かすのをやめて声を出します。 小さな声でかまいません。can と can't の違いや、過去形 (past tense) の語尾の ed は、声に出さないと身につきません。電車の中ではささやき声にします。
- 毎日素材を変えるのをやめます。 同じ一本を四日から五日使います。可算名詞 (countable noun) の複数や、現在進行形 (present progressive) の is working のような形が、繰り返しで口に残ります。一本が終わってから次に進みます。
シャドーイングの素材選びや録音の直し方で迷うときはSlovaに相談してみてください。自分のミニコースを作る →から続けられます。
自分のミニコースを作る →結論
シャドーイングは、聞く速さと口の動きを鍛える練習です。九割分かる一分台の素材を選び、意味の確認から音読、重ね読み、見ない追跡、録音の確認へと進めます。一回十分と一素材五日を目安に続けます。音読や産出練習と組み合わせると、TOEICや英検、仕事の英語にもつながります。
よくある質問
一日にどれくらい練習すればよいですか。
十分から十五分で十分です。短い集中を毎日続けます。疲れた日は五分にします。同じ素材を四日から五日使います。
TOEIC対策にシャドーイングは役立ちますか。
聞き取りの速さに役立ちます。Part 3やPart 4のスクリプトが素材に向いています。意味の確認と録音の聞き返しを欠かさないことが条件です。
スクリプトはいつ外せばよいですか。
見ながら九割追えたら外します。追えない部分があれば見ながらに戻ります。行ったり来たりしてかまいません。無理に外さないほうが伸びます。
声を出せない場所ではどうすればよいですか。
心の中で追うか、ささやき声にします。できるときに小さな声で発音します。録音の確認は静かな場所でまとめて行います。
参考文献
- Council of Europe. Common European Framework of Reference for Languages: level descriptions. 素材の難易度の目安と学習段階の整理を支えます
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students' learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4-58. 繰り返しと確認テストの有効性を支えます
